【RoHS指令対応】 「作業用品差し替え」から始める対応策

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【RoHS指令対応】 「作業用品差し替え」から始める対応策

2019年11月1日 初版

有害廃棄の規制にとどまらない、環境規制のグローバルスタンダードとして話題の「RoHS(ローズ)指令」。EU発の環境対策基準が及ぼす影響はEU外の各国にまで及んでおり、メーカー各社はその対応に追われています。この規制の強化を新たな機会へと変えるために、一体どのような対応策が必要なのでしょうか?今回は、RoHS指令の概要と、具体的な対応策をご紹介します。

改めて整理する環境規制の世界基準「RoHS(ローズ)指令」とは

ヨーロッパ連合(EU)が制定・施行している「RoHS指令」は、家電・工業用機器に含まれる特定有害物質の含有率を厳しく規制し、実質的に使用禁止とするものです。例えば、コンピュータなどの電子機器には様々な有害物質を含む部品が使われていることをご存知でしょうか?これらの有害物質は、その製品が廃棄されたときに初めて、自然環境に悪影響を及ぼします。

代表的な有害物質が「鉛」や「水銀」です。これらは酸性雨によって溶かされ、やがて地下水を汚染するなど、深刻な環境汚染の原因となっています。

RoHS指令で使用禁止となっている有害物質と含有率基準値

RoHS指令では、主に次の物質が規制対象となっており、それぞれ規制濃度(閾値)が厳しく定められています。

・鉛 ― 0.1wt%(1,000ppm)以下
・水銀 ― 0.1wt%(1,000ppm)以下
・六価クロム ― 0.1wt%(1,000ppm)以下
・ポリブロモビフェニル[PBB] ― 0.1wt%(1,000ppm)以下 等々…

上記の物質が製品の中に一定量以上含有されている場合、EU全域で販売ができないことになります。そして、これらの対象とされている主な製品には、次のようなものがあります。

・大型家庭用電気製品 (例)冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ
・小型家庭用電気製品 (例)電気掃除機、アイロン、トースター
・ITおよび遠隔通信機器 (例)パソコン、フリンター、複写機
・民生用機器 (例)ラジオ、テレビ、楽器
・照明装置 (例)家庭用以外の蛍光灯

2006年の施行当初は、前述の6有害物質 <鉛・水銀・六価クロム・ポリブロモビフェニル(PBB)・ポリブロモジフェニルエーテル(PBDE) ・カドミウム> が対象となっていましたが、2015年には新たに4物質が追加されるなど、その厳しさを増しています。

2019年7月22日改正内容とは?

続いて、10の異なるカテゴリーに加えて、2019年には更に「カテゴリー11」が追加されます。これは、「フタル酸エステル4種の含有が1000ppm(重量比0.1%)までしか認められない」というもので、電源コードのほか、製品内部の電気コードやケーブルが該当します。エアコンやテレビを始めとするほとんどの電気製品に「フタル酸エステル」が含まれるため、膨大な対応作業が必要とされています。

一方で、これらを全ての製品に適用すると、産業全体に多大な影響を及ぼすことは想像に難くないはずです。そのため、「RoHS除外項目」といった例外が示されており、「サーバーに使われる『はんだ』に含まれる鉛」といった32項目が除外対象とされていることも見逃してはなりません。
参考:Waste electronic equipment - Environment - European Commission

今後も化学物質を規制する法令が施行される見込みに

RoHSの登場は、他国の動きにも大きな影響を与えています。例えば、EC非加盟国のノルウェーは、PoHS (Prohibition on Certain Hazardous Substances in Consumer Products) という独自規制の施行に向けて、調整を続けています。この「PoHS」は、RoHS指令よりも厳しい内容が予定されており、今後他国への更なる影響の派生も予想されています。

このように加速し続ける規制強化の動きですが、企業各社はどのような対応が求められるのでしょうか?ここで考えるべきは、RoHS指令を前向きに捉え、「いかに環境問題に真摯に取り組む企業であるか」というアピールにつなげる、という方向性です。

企業イメージにも大きく影響するRoHS指令への対応

グローバル市場に目を向けると、アジアや中東を始めとする新興国の成長が著しい印象ですが、今もなおヨーロッパは巨大かつ魅力的なマーケットです。だからこそ、「EU市場からいかに支持を得るか」を考える上で、RoHS指令への対応をアピールすることは有効な戦略です。そのハードルが高いからこそ、積極的な取り組みを進めることは、企業イメージにもポジティブな影響を及ぼすのです。

例えば、各社が製品パッケージに掲載している「RoHSマーク」。これは、環境問題への自主的な対応をアピールするためのもので、メーカーごとにデザインは異なっています。実際には公式の「RoHSマーク」なるものは存在していないため、あくまでも各メーカーが任意で行っている取り組みなのです。

このようなわかりやすい取り組み以外にも、企業内部で実施できる取り組みも広まりを見せています。

「作業用品差し替え」から始められる対応策

RoHS指令への対応を考える上では、何も製品パッケージに限定する必要はありません。製品の製造プロセスや社内活動を始めとして、幅広いアピールを行うことが可能なのです。例えば、拭き掃除などに使う作業用品(ウエスなど)を、環境に配慮した産業用ワイパーに替えるなどの取り組みも有効です。環境に配慮した製品では、牛乳や紙パックなどの良質なパルプを原料としており、紙の表面に張られた「ポリフィルム」を除去すれば、高品質なパルプを得ることができるのです。

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そのサプライチェーンをたどると、<紙パックの回収→再生→再利用>というステップを経ており、作業用品を差し替えるだけで極めて大きな環境対策につながることがわかります。このようにRoHS指令をきっかけとして、企業イメージについても検討し直すことで、環境への影響を考えた取り組みが社内に根付き始めます。いまや、環境に配慮した製品やサービスは「エコプロダクツ」と呼ばれており、それ自体が製品のプロモーションに役立つため、従来型のプロモーションとは異なる発想が求められているともいえるでしょう。

規制への早急な対応が求められる今、後手でその対応に追われていては、企業や事業、ブランドの成長にはつながりません。対応を避けることのできない事態だからこそ、前向きな姿勢で取り組むことで、「環境志向の企業としてのイメージアップ」や「社会的信頼の向上」につなげることができます。環境対策の第一歩として、作業用品差し替えを検討されている企業のご担当者様は、弊社までお問合せください。

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