日本製紙クレシア
2019年11月1日 初版
医薬品の製造管理、品質管理について考える上で、欠かすことのできない「GMP」。その基準を順守するためには、使用備品のリスクを始めとする「実験環境に関する知識」を深めることは必要不可欠です。医薬品の品質のあり方が問われる今、見直すべき製造環境について、今回は3つの注意点を中心にご紹介します。
医薬品の製造管理、品質管理基準を指す「GMP」。医薬品は人の生命や健康に直接関係することから、最新版の手順書に則り、定められた製造・品質業務を順守することが求められます。しかし、その適正な運用を行うためのハードルをクリアすることは容易ではなく、GMP工場としての監査対応など多くの課題が存在します。
そして、GMPへの理解を深める上で見逃せないトピックが「GMP省令改正」です。2019年時点では、未だ議論が続いている状況ですが、製品の品質保証に影響を及ぼす複数の要件が盛り込まれる見通しです。現時点で公開されているGMP省令のポイントは、「①マネジメントレビューの導入」と「②品質保証部門(QA)の設置」にあります。
1つ目の「マネジメントレビュー」は、医薬品の品質を保証する上で必要不可欠な「責任体制(責任の所在)」を明確にするものです。当該項目では、「上級経営陣はGMPの最終責任を有する」ということが明記されており、この点は現行の制度とは異なります。
2つ目の「品質保証部門の設置」は、工場各部門において品質マネジメントレビューに関する報告事項を取りまとめる役割を明確にするものです。この部門が設置されることで、前述の上級経営陣からの指摘事項が工場の各部門にまで正確に伝達されることが期待されています。
このように、GMP省令改正にあたっては「品質保証体制の強化」という方向性が色濃く見受けられます。医薬品業界では、過去に「製造販売承認書と製造実態の乖離」が見られる事例も発生しており、品質保証の意味が問われる事態となっています。だからこそ、品質保証の担い手を具体的に定め、役割に応じた責務を明示することが業界全体として求められているのです。
GMP省令改正の動きからも見て取れるように、医薬品・化粧品業界では、品質保証を実現するためのより厳しい条件が定められる傾向にあります。例えば、製品を取り扱う作業室や空気処理システムに関する措置など、製造設備に求められる要件も具体化しつつあるのです。この背景には、海外におけるGMPの位置づけと、日本国内のGMPとの間に大きなギャップが生じていることが関係しています。
GMPとは本来、「人為的な誤りを最小限にすること」「汚染および品質低下を防止すること」「高い品質を保証するシステムを設計すること」という三原則をクリアするために存在しています。しかし、日本国内の医薬品業界では、市場に出された医薬品の品質に疑問符が投げかけられたことで、今改めて信頼を取り戻すための取り組みが必要とされています。
医薬品の品質管理の不備の具体例としては、ラベルの表示ミスの他、副作用リスク、規格不適合などが挙げられます。これらの不備は毎年150件程度発生しており、いずれも回収などの対策が取られています。中でも医療・化粧品メーカーを悩ませているのが「異物混入」です。
前述のGMPの内容からも見て取れるように、医療・化粧品メーカー各社は製造環境のクリーン化や検査装置の導入を始めとして様々な対策を実施しています。しかし、それでも検査のすり抜けを100%防ぐことはできず、それらの製品は市場へと出回ってしまうのです。では、検出感度を上げれば良いかというと、そうとも言い切れません。何故なら、ただ検出感度を上げるだけでは誤検知(良品を不良品として検出する、といった事態)を引き起こすことになり、本質的な解決にはつながらないのです。
異物検査装置の検知力も日々進化しており、「人による目視検査」と併用して「画像検査機器や金属探知機の活用」といった手法が用いられています。その結果、毛髪やガラス片、昆虫といった異物混入を検知した上で、それらの医薬品を除外することも可能になっています。しかし、それでも異物混入による医薬品の回収は年10件程度発生していることは事実です。そして、この他に「良品の巻き込み」が発生している点についても、改善に余地があるといえるでしょう。
このような状況下で必要とされるのが、「医薬品製造の大原則」に立ち返ったマネジメント手法です。
医薬品製造の大原則は「入れない」「造らない」「出さない」というものです。このうち、「入れない」は、原料・資材の異物に汚染された物の混入を防止することを意味します。この取り組みを実践するうえで欠かせないのは、「使用備品を厳選する」といったリスクマネジメントへの取り組みです。
例えば、糸クズ・毛羽立ちの発生を抑えるためには、「産業用ワイパー」の活用が最適です。衛生面の他、吸水量や低発塵が徹底された不織布ワイパーであれば、異物混入のリスクを最小化することができ、医薬品製造の大原則を実践に移すことができます。
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